2006-05-14から1日間の記事一覧

島崎藤村

島崎藤村の酷薄な筆致がなければ、日本の私小説が特殊な力を得ることは無かった。それは藤村の冷厳に過ぎるまなざしであって、私小説の理論にはない。 「夜明け前」の終章、発狂して座敷牢で死ぬ父を描く彼の筆致に叙情の痕は微塵も無く、父への追憶など生や…