詩
秋日
わたくしのあの向う
影のように無数の女が過ぎゆき
ほの青い匂いを残す
さらさらと流るる銀光
去来する淡く光る時間
つと来ては去り
つと来ては止む
(やわらかな久遠。やわらかな久遠。)
明滅する女。螢。
すすきの穂が火となり
菫青の空をあかるくすれば
こくりこくりと
人知れず育つ結晶
(やわらかな久遠。やわらかな久遠。)
暗室でぱたりと鳴る映写機に
桔梗の星がやどり
遠い日は女たちのうたに
はためいたほのかな光芒は
宵の底であたたかな雪となり
かすかに生まれ
かすかに消える
(やわらかな……)
わたくしたちのすがたは
さらさら鳴るあの秋草の深奥、
かげろうの群落
(2006年10月)